2002年05月02日
トーノZEROアニメ感想.hack//SIGN total 2033 count

多重化された世界と自己言及される世界 『遊びなのに指名手配だなんて変くない?』

Written By: トーノZERO連絡先

 実はこの作品に関して何かを書くのはこれで2度目です。つまり、これより前には、第1話を見た感想の1個のコラムしか存在していませんでした。それにも関わらず、なぜか、本サイトのアクセスカウントのランキングに顔を出すキーワードという、非常に珍しい作品であります。

 で、これまで1回しかコラムを書いていなかったことは、この作品を軽視したとか、駄目だと思ったとか、まして「良いのは音楽だけじゃん」とかうそぶいていたわけではありません。

 正直なところ、毎回、凄く良かった、というのが正直な感想です。

 ほとんど全てのシーンが、ゲーム内の仮想空間を描写しているにもかかわらず、ゲームの外側にある現実世界をありありと思い描くことができるシナリオと演出力は大したものだと思うし、ゲーム内部で発生した問題に対して、登場人物がそれぞれ思い悩んでいることに、十分に感情移入できます。

 特に、良いのは、ゲーム内でどんな姿をしていようと、実際のプレイヤーの人物像が透けて見えることです。たとえば、明らかにベアと昴は、若者ではありません。おそらく、かなり人生経験を積んだ中年プレイヤーでしょう。それに対して、ミミルは明らかに現実でも外見に近い年齢でしょう。そうやって、ティーンエイジャーと中年のプレイヤーが、タメ口きいて、対等の友達をやっていられる、というのが非常に面白いところです。

 それから、特筆すべきは、この世界がゲームであるということが、常に意識されていることです。全ての出来事は、何もかもゲーム内の問題であって、けして現実と混同されることはありません。紅衣の騎士団の者が、その一線を踏み外そうになったとき、昴が「我々もプレイヤーなのだ」とたしなめるシーンは最高にゾクゾクします。

 今回に関しても、ミミルの「遊びなのに指名手配だなんて変くない?」という台詞が、グサッと状況を突き刺す一言になっていますね。たかが遊びなのに、誰もが熱くなり、まるで人生の一大事のように真剣になっているという状況を、誰もが自覚しながらも、それでも行動せずにはいられないのです。

 世界は虚構でも、コミュニケーションは実在であり、人間はコミュニケーションする動物である以上、コミュニケーションの重要性は世界の実在の重要性を超えるのかもしれません。

 今のところ、この作品は、今最も目が離せないアニメだとと~のは思っています。現状、今の日本のアニメ界には、探せばいくらでも優れたアニメが存在し、贅沢すぎる状況じゃないかと思うこともあるぐらいです。しかし、ただ単に優れたアニメであると言うだけでなく、その先の何かを示そうという作品はあまり多くありません。そして、この作品は、数少ないその範疇に入る作品だと思います。

 当然のことながら、と~のは、.hack//SIGNを応援しています。


ご注意: このコンテンツは、「バーチャルネットライター と~のZERO歳」と呼ばれるサイトに書き込まれた内容を変換して、本サイトに転送したものです。このコンテンツの内容は、「と~のZERO歳」という仮想人格が書いたものという設定であり、謎のアニメ感想家トーノ・ゼロと限りなく近いものの、必ずしも同一人格ではないことをお断りしておきます。